岩垣丞恒の酸素十ヶ条
現状:生体内は常に酸素不足に陥りやすい状態にあります。
一、酸素は気管・肺胞を広げ、酸素と血液成分の結合を高めます。
二、酸素は血液の流れを改善し、酸素供給を高めます。
三、酸素は血圧を低下させます。
四、酸素は神経細胞の伝達物質を合成し、やる気を起こします。
五、酸素は疲労を回復し、活力を高めます。
六、酸素は免疫力を高め、病気にかかりにくくなります。
七、酸素は脂肪を独占的に利用し、肥満を防ぎます。
八、酸素は代謝を高め、体温を上昇させます。
九、酸素はコラーゲン合成を高め、骨・腱・靭帯を強化します。
十、酸素は老化を防ぎます。
酸素力
酸素は無味無臭の気体で、触ることも見ることもできませんが、食べ物や貴金属類とは異なり、命と密接に関係し、なくなればたちまちのうちに命が失われ、あれば生涯を過ごせるという魔法の物質です。 他の物質は固体や液体で、生命内で利用するには長時間の消化が必要ですが、酸素はすでに分子状態にあり、取り込まれれば、直ちに生命反応が起きます。 人口呼吸は単に命だけが回復するだけでなく、人の回復を見ることができます。 ラボアジェによる酸素の発見は、ウィーランドによる”脱水素学説”として世界的に受け入れられ、現在でも、安静時の酸素接種量は1METS=3.5mlO2/kg/minで用いられます。 ところが、早石 修博士により、細胞内で酸素を利用してさまざまな物質を作り出す酸素添加酵素が発見され、酸素がコラーゲン合成、コレステロール合成、一酸化窒素合成、プロスタグランジン合成、神経伝達物資号合成、日内リズム形成に関係しています。 これらの研究はノーベル賞に輝いた研究で、生体内ではとてつもない領域の役割を持ち、生命体の基盤を構築しています。 その理由は、われわれの生命体は酸素が作り挙げた好気的生命体で酸素にその原始的機構があるためです。 日常的には、全く意識することは出来ませんが、60兆といわれる細胞集団では、さまざまなところで酸素不足が発現しています。 酸素を高め、再構築することで酸素力が確認できます。《加齢と運動種目との関係》
大阪市立大学元教授の小田俊夫博士による加齢と運動種目との関係では、高齢になるに従い、運動の中心が散歩に集約されていくとされています。理由は明らかではありませんが、高齢者に残された運動が散歩となっている事は間違いありません。無駄なエネルギー消費を避け、二本足で立ち、自由に行動が出来る事だけは確保しようとしているのです。加齢が進めば、激しく強い運動は出来なくなり、生体内での酸素不足を起こさない軽い運動が選択されます。
加齢は時間が組み込まれた現象で、時間との関係で論じられますが、生命と時間との関係があれば大きな個人差の現象はなく、時間は必ずしも絶対条件とはなっていません。60歳、80歳、100歳と区別されても、全ての人がこの年齢現象を現すわけではありません。学術的には加齢現象は時間に伴う現象とされ、このような方向性を持つことが理解されているためです。高齢者の筋力トレーニングでも立派な筋力育成が可能で、加齢に対する心得が大きな障害となっている可能性があります。
我々の生命体は常に変化し続け、再生されています。60兆の細胞集団の1兆程が毎日再生され続けて現在があるわけですから、この再生力を高めることが要求されるのです。現在のところ、加齢予防策として運動という手段が間違えないことが確認されていますが、運動自体は物理的指標で時間や運動が直接生命体に影響している訳ではなく、運動を介して体内に取り込まれる酸素が問題となっているのです。酸素の役割には異化(エネルギー消費を行う反応)と同化(生体の物質合成を高める働き)があり、酸素不足で異化が促進し、酸素充足で同化が促進されます。運動と回復がまさに分かり易い現象で、運動ではエネルギー産生のために酸素が摂取されますが、これらの酸素は全て代謝水となってしまいます。回復では多くの酸素が生体内の酸素化を高め、同化作用が発現し、運動後の回復を早めます。以上のように酸素化を高める手段が、生命の再生力を高め、加齢予防となっているのです。
酸素の役割は細胞内のMitochondria工場でのエネルギー産生(ATP)にあります。これはH.Wielandにより発見された現象です。この反応はこれまでの合成とは全く異なり、物質を分解して(異化)、ATPを産生することにあり、この制御は酸素が行っています。運動強化に比例して酸素摂取量が増加することが明らかになっています。
これらのエネルギー資源はブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸ですが、アミノ酸の利用は仕事と関係が少なく、仕事量を高めても尿中窒素の増加が起きません。ほとんどがブドウ糖と脂肪酸の利用と考えられています。糖質としてのブドウ糖は分子量が小さく水に溶解するため、自由に体内を動く事が出来ます。ところが、脂肪酸は脂肪細胞TG(トリグリセリド)の分解がなければ利用する事が出来ません。細胞内への蓄積にも限界があり、脂肪が多くなれば細胞死を引き起こします。更に、その貯蔵にも特徴があり、脂肪細胞を形成し、脂肪組織として存在します。従って、脂肪を利用するためにはこの貯蔵庫から脂肪を分解して取り出す必要があります。脂肪の利用については、試験管内の研究でアドレナリン作用が有名ですが、脂肪分解に至る濃度はとても高く、生体内で発現する現象ではありません。そこで、歩行運動では歩行時間が長くなることで脂肪分解が高まるため、脂肪利用に最適とされています。歩行運動での内分泌も同時に策定されていますが、試験管内実験のような変化は生体内ではほとんど発現しません。ところが、高濃度酸素を吸収すると20分という短維持間でPlama FFAの増加が発現します。
Plasma FFAは脂肪細胞TGの分解産物のため、酸素を高めることで分解されます。これはラットの動物実験にて立証させています。ラットを1日4時間、週5日間の4週間、40%の高濃度酸素の環境で生活させます。高濃度酸素暴露でホルモン感受性リパーゼが活性化されることがわかります。その結果、Plasma FFAも2倍近くに増加します。従って、人間でみられたPlasma FFAの増加は脂肪細胞でのホルモン感受性リパーゼが活性化されることになるのです。
脂肪の利用は受動的に行われるので、脂肪分解に伴うPlasma FFAの増加は細胞内での脂肪利用を高める結果となります。
肝臓では細胞内のMitochondriaの分離が十分行えますが、他の組織ではMitochondriaを完全に分離する事が出来ません。肝臓の組織内では気体の酸素濃度を高めることでMitochondriaが増加し、送りこまれる脂肪酸を十分燃焼できる仕組みになっています。そして、他の組織ではMitochondriaに限定して存在するCardiolipinという物質が測定できます。高酸素暴露はそれぞれの組織でCardiolipinの増加が起きているため、高酸素環境ではあらゆる組織の細胞内Mitochondriaにも増加が起きているともいえます。従って、高酸素暴露は単に脂肪を分解する働きだけでなく、末梢の細胞内でのMitochondriaを増加させ、脂肪の利用が可能な仕組みを形成する働きとなっているのです。
早石 修氏による酸素添加酵素(Oxygenase)の発見はこれまでの酸素の役割とは180度異なる意味を持っています。H.Wielandの酸素の役割は生体内での水素イオン(H⁺)除去であるのに対し、早石氏の発見した酸素の役割は酸素が添加されることで物質合成が行われているという事実です。ラボアジェの酸化と同じ現象が生体内に存在していることを示しています。
生体内でのこれまでの酸化は脱水素酵素、酸化酵素の働きで水素が移動することで起こり、主としてこの系はエネルギー産生で利用されます。ところが、酸素添加酵素の働きは空気中の酸素が細胞物質に添加され、酸素が移動することで物質が合成されます。この酸素添加酵素による様々な物質の合成は極めて広く、エネルギー資源の分解並びに合成、ステロイドホルモン、胆汁酸の合成、血色素の合成並びに分解、解毒作用、発がん物質の代謝などと極めて高領域の働きを持っています。
この他にコラーゲン合成(ヒドロキシプロリン、ヒドリキシリジン分子)、神経伝達物質合成(アセチルコリン、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン)にも酸素添加酵素の働きが見出され、酸素という気体が生命体の構造と機能に大きく関係しています。
①酸素添加によるprostaglandin(PG)の合成
細胞内のMicrosomeは細胞膜のアラキドン酸を利用して、酸素を添加することでPGの合成を行っています。全身の細胞での役割となり、極めて広範囲の作用となります。
免疫機能の立場ではPGが免疫機能を高めます。このことを裏付けるのは、運動と免疫との関係でOpenWindow説です。激しい運動は免疫機能を低下させ、窓が開き、感染を受けやすくしますが、中等度以下の運動であれば、免疫機能が高まるという説です。激しい運動では生体内で酸素不足が起きていますが、中等度以下の運動では酸素が充足し、酸素化が高められ、PGが高まるのです。
②酸素は血液中の一酸化窒素を高める
血管内皮細胞では血液中の酸素とアミノ酸であるアルギニンで一酸化窒素合成酵素(NOS)を合成し、血液中へ一酸化窒素(NO)を放出しています。NOは血管平滑筋を弛緩し、酸素供給を高める働きとなります。NOはニトログリセリンの終末産物で、一般的には即効性があることが知られています。実例として、高酸素吸入後の血液検査では即時に血圧低下が起こります。更にNOは視細胞から放出される活性酸素(O2⁻)と結合し、硝酸イオン(NO3⁻)を形成し、尿中へ排泄し、活性酸素除去にも貢献しています。
NOのこのような働きは全身の血管に及んでおり、極めて大切な働きです。生あくびなどで表現されますが、この背景には酸素を高め、NOを放出し、血管の弛緩を引き起こしている現象なのです。
③酸素はコラーゲンを合成する
コラーゲン分子はヒドロシプリン、ヒドロキシリジンで、これらの合成は酸素添加酵素が関係し、酸素とビタミンCが必須です。コラーゲン分子の集まりがコラーゲン線維となり、コラーゲンが存在するあらゆるところには酸素とビタミンCが必要となります。
特にスポーツ選手は大きな衝撃力に耐える力が必要ですが、衝撃を受ける部位の面積は極めて狭く、局所的に大きな力が加わる為に傷害が起こります。傷害のほとんどが骨と健の結合部に起こり、この修復には酸素と過剰なビタミンC(一回に2~4g)が必要なのです。
生体全体でのコラーゲンの所在は皮膚、血管、骨、腱、靭帯、軟骨、椎間板と全身に及んでいます。その為、生体内のコラーゲンの消滅は細胞の消失に繋がります。
④酸素はコレステロールを合成している
コレステロールはスクワレンから合成されています。合成の過程では酸素の存在が基盤となっていることがわかっています。
コレステロールは細胞膜にとって必須の物質で、細胞形成には不可欠な存在です。赤血球膜では構成脂質の30%がコレステロール成分で、骨格筋細胞、神経細胞の増殖には必須となります。
⑤酸素は神経伝達物質に必要
A.アセチルコリン
アセチルコリンは神経伝達物質で、神経細胞間や神経筋での情報伝達を行います。特徴は神経刺激に伴い、細胞内でアセルチンコリンが合成され、シナプス前膜から分泌され、このアセルチンコリンがシナプス後膜に到達することで情報伝達が終了します。アセチルコリンは再合成されますが、この時にアセルチル基は酢酸として代謝されるのに反し、コリンは再吸収されます。再合成時にアセルチン基不足となってしまう為、Mitochondriaがアセルチン基の供給源となっています。酸素を高めるとMitochondriaでの代謝活性が進むため、多くのアセルチン基を供給できることになり、酸素がアセルチンコリンの分泌を高めます。
B.ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン
ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンは脳神経細胞間の伝達物質です。チロシンからドーパミン、ドーパミンからアドレナリンやノルアドレナリンが合成されており、酸素はこれらの神経伝達物質合成に必要であり、酸素が神経伝達物質を高める結果となっています。
高酸素吸入後、光反応測定では反応時間が短縮し、クレぺリン検査では回答数が高まり、頭がすっきりするという自覚症状が起きます。
高酸素(40%)吸収は何も自覚症状がないのですが、20分間の高酸素吸収だけで下記のような様々な現象が起きてます。
①Plasma FFA増加
Plasma FFAは脂肪組織の脂肪細胞TG(トリグリセンド)の分解に依存している物質の為、Plasma FFAの増加は酸素を高めることで脂肪組織のTGが分解されることを意味しています。
歩行運動は、もっとも脂肪を利用する運動てして取り上げられていますが、歩行時間が長くなることでPlasma FFAが増加します。これは、簡単な運動なのですが、呼吸を繰り返しているうちに生体全体の酸素化が高まり、酸素が脂肪を分解した為です。
20分間という短い間、高酸素吸収だけで血液中の酸素濃度が高まり、Plasma FFAが増加したことになります。
②血圧低下
血液中の酸素濃度は常に頸動脈小体の監視装置で調べられているので、酸素濃度の変化は直接心臓の動きとして出現されます。一般的には酸素濃度が高まることで、心拍数が減少し、血圧の低下が起きます。
血圧を測定している途中で高酸素吸収を開始すると、心臓の負担が軽減され、心拍数の低下に従って血圧低下が起こります。
③光反応時間
脳神経系への環境を判別する測定方法の光反応時間を調べると、高酸素吸収での光反応時間の短縮が起きることが判明しています。これは、酸素を高めることで集中や神経伝達に大きく関与していることを意味しています。
④体温上昇
酸素を高めることで起きるPlasma FFAの増加は、受動的に脂肪の利用を高めます。従って、酸素を高めることで、Mitochondriaでの脂肪燃焼が高められます。しかし、特別な仕事をしているわけではない為、現実的には無駄なエネルギー産生となり、仕事のエネルギー全てが熱産生として放出されます。高酸素吸収20分後の体温を調べると下のサーモグラフティーが示したように、全身の体温上昇が観察され、これは高酸素の影響として認められます。
生体内での酸素の役割はH.Wielandにより、生体内で産生された水素イオン(H⁺)を除去するための働きで2H⁺+1/2O₂=H₂Oとなることが明らかにされ、酸素は生命エネルギー(ATP)産生することが示されています。現在でも国際的に1METS=3.5mlO₂/kg/分として利用されます。しかし、これは体重1kgあたり毎分3.5mlの酸素を使用していることを示したものです。運動を負荷すると酸素摂取量は比例して増加し、400W時点で運動負荷が重すぎて間に合わなくなり、酸素摂取量は低下してしまいます。
このような比例関係が成立してることにより、単位運動あたり(W)の酸素摂取量は一定となり、絶対酸素摂取量(mlO₂/kg/min/W)となるのです。しかし、200~300Wの運動では比較的一定(0.175ml/kg/min/W)なのですが、200W以下の運動では指数関数的に増加します。これは、軽い運動をしているのですが、運動以外に利用されるための酸素が摂取されている為です。運動強度が低くなればなるほど、酸素摂取量が高まるのです。
酸素摂取量には運動エネルギー生成のために摂取される酸素と、運動エネルギー以外に利用される酸素が存在しているのです。
これを更に確立する軽い運動後の血液色を比較した実験が行われています。
静脈血は常に暗紫色で、動脈血は鮮紅色ですが、運動後の静脈血は鮮紅色になります。したがって、全身に濃度が高い酸素が巡り、酸素供給が高められているのです。静脈血の鮮紅化は余分な酸素の摂取を意味し、酸素摂取はエネルギー産生に必要な酸素だけが摂取されているのではなく、特に軽い運動では余分な酸素摂取が起きていることを意味しています。
生体内での酸素状態と酸素の取込みを酸素摂取といいますが、酸素の取込みは受動的に行われます。
濃度の高い所から濃度の低い所へ移動することで、空気中から生体内へ移ります。いわゆる受動的拡散といわれる現象です。
この特徴は、酸素が移動にエネルギーを必要としない事にあります。生きている限りこの働きは継続し、酸素が生体内に取り込まれるのです。したがって、空気中の酸素濃度が低くなれば命取りとなり、10%以下の酸素濃度では一呼吸で失神を引き起こします。生体内の酸素が空気中に移動してしまう為です。
高地では酸素濃度が低い為、限界の領域での登山はとんでもなくゆっくりでしか歩くことができません。これは筋力や筋持久力に依存する現象でなく、脳への酸素不足が大きな原因です。
運動に際しては、運動を引き起こすための機構の運動神経刺激は、電気的信号で筋を刺激する為、伝達と筋収縮は極めて速く起きます。Mitochondriaでの酸素を利用したATP(アデノシン3燐酸)生成は生化学的に行われるので、電気的刺激に比較すれば極めて遅く、さらに酸素輸送は受動的拡散の為、酸素不足が起きます。したがって、異化反応では酸素不足になりやすい状態となり、大きな力を出す際に酸素不足となっていますが、小さな力の場合では酸素不足が起きにくく、エネルギー産生をしながら運動が出来る状態にある為、長時間の運動が出来るのです。
高酸素吸入は生体内と高酸素との落差が大きく、酸素が受動的に生体内へ取り込まれ易くなり、高酸素は生体内負担を軽減します。
毎分300mの速度の15分間のトレッドミル走実験で、高酸素(60%)を利用した時の選手のパフォーマンスをPWC170(心拍数が170に達するまでの時間)で比較すると、高酸素の効果がはっきりみられます。
空気(20.9%)では2分で心拍数が170に達しますが、高酸素では2倍の4分に延長します。毎週1回ずつ行うとPWC170は徐々に延長し、4回目には4倍の8分まで延長していきます。血液内乳酸も空気中では7mM/Lですが、4回目には4mM/Lに減少していきます。このように高酸素の影響がはっきり出現されるのです。
我々の生命体は60兆といわれる細胞集団で、毎日およそ1兆近い細胞集団の細胞再生と細胞死を繰り返しています。この点が物質と生命体との基本的な違いで、生命体では常に現在のみが存在し、本来は加齢現象にみられるような時間的変化は極めて少ないはずです。しかし、理解を進める上では、時間を加えることで分かりやすく新たな解釈に発展できるという得策があり、年齢や性別、体重、身長などを基準としています。心筋の細胞や脳の神経細胞を除けば、全ての細胞集団は常に細胞の死と誕生が繰り返され、今現在が常に存在していることになり、加齢現象ではありません。
細胞死と細胞再生を調整しているのは酸素です。それぞれに原因があるのではなく、酸素が少なくなることで細胞死が多くなり、酸素が高まることで細胞再生がおきます。
例を挙げれば、手や足などをギブスで固定すると、固定された筋群では血流が減少し、酸素供給が不十分になり、筋群の委縮が起きます。逆に老人でも筋力トレーニングで毛細血管が増加し、筋肥大が起きます。いずれも酸素供給の良否で決まるのです。
地球の誕生した時は空気中に酸素はなく、光合成の出現が藻類での酸素光合成を高め、はじめて空気中へ酸素が放出されていました。光合成生物の出現は25億年前で、15億年前に好気性菌の出現、その後核を持つ生物の出現が起きています。ラン藻類の増殖と植物の陸上進出が空気中の酸素を高め、現在の空気中酸素濃度は20.9%とされています。生体という立場でみますと、5億年前の原子魚が我々の先祖といえます。生命体の進化の末裔が我々動物なのです。棲んでいる環境で機構は違いますが、全ての生命体が酸素を利用して生存し続け、安心して生存できる要因は酸素が存在することにあります。
応用生物研究所の加藤博士は、酸素を必要としない酵母菌に酸素を流すことで、Mitochondriaが形成されることを見出しています。酵母菌は嫌気的菌で、酸素を利用しないで生存する仕組みを持っていますが、酸素を与えられると酸素を吸収するようになり、酵母菌内にMitochondriaが形成されます。空気中の酸素が生命体の細胞内にMitochondriaを形成することから、酸素が生存する事で好気的菌が形成されるという研究です。なぜこのような現象が起こるのかは明らかにされてませんが、酸素の働きによって起きることは確かな事で、トレーニング選手の筋では血管の増殖が起きると、筋細胞内のMitochondriaの増殖が起きることから酸素がその要因になっているのです。